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細胞診検査標本作製法

湿固定が正しく行われなければ細胞は本来の形態から変化し、良性細胞を良性、悪性細胞を悪性とする基本的な判定が難しくなってしまいます。下記の標本作製法を参考により良好な標本をご提出くださいますようお願い致します。

細胞診検査は、必ずしも確定診断ではありません。診断はご提出いただいた標本において下されたもので、病変全体を反映するものではないことを、あらかじめご承知おき下さい。

塗抹操作

塗抹するスライドガラスは十分に洗浄、脱脂されたものを使用し、患者名等を記入して下さい。すりガラス(フロスト)を使用する場合、鉛筆等で記入して下さい。(HB以上の芯の軟いものを使用して下さい)

 婦人科

乾燥しやすいので、塗抹後直ちに湿固定してください。潤滑ゼリーなどの使用は避けて下さい。
血液、粘液、浸出液が見られたら、ガーゼ等でぬぐってから採取して下さい。

材料採取・塗抹:図

 喀痰

起床時、(食事をとらず、タバコも吸わないで)口の中を水でゆすいでから、深呼吸や2~3回咳をした後、のどの奥より痰を吐き出して下さい。喀痰は材料の採取部位により癌細胞の検出率が異なるので血性、膿性、粘液性等肉眼的に異なる部位より採取し塗抹します。

●すり合わせ法

材料は小豆大くらいをピンセット等でつまみとり、2枚のスライドガラスではさみ、軽い圧迫を加えて前後左右にすり合わせて塗抹固定します。その際、あまり強く圧迫しすぎたり、すり合わせの回数が多すぎると細胞崩壊が多くなります(5回程度)。又均等に塗抹して下さい。

すり合わせ法:図

●3日間蓄痰法

ポストチューブ法はすり合わせ法又はそのまま提出、サコマノ法はそのまま提出して下さい。

 体腔液:胸水・腹水・心のう液

抗凝固剤(3.8%クエン酸ナトリウム、ヘパリン、EDTA等)を加えて試験管にて採取して下さい。

1500回転5分間遠心後、沈渣物をすり合わせ法又は、引きガラス法で塗抹固定して下さい。

引きガラス法 細胞成分の少ない検体角度を高くし、すばやく塗抹 粘稠度の高いものや細胞成分の多い検体角度を低くし、やや遅めに塗抹 塗抹面は、スライドガラス辺縁より3mm~5mm内に塗抹してください。

※ 粘稠性の高い液状検体

喀痰と同じ要領ですり合わせ法で塗抹固定して下さい。

※ 血性成分の多い液状検体

1500回転、5分遠心後、バフィーコートを毛細管ピペット等で吸い取りスライドガラスに1~2滴滴下し、すり合わせ法又は、引きガラス法で塗抹して下さい。

バフィーコート:図 注意 上層部を注意深く吸い上げる

 尿・洗浄液・髄液

1500回転で5分(髄液は700~800回転で5分)遠沈し、スピッツを逆さにし、一気に上清を捨て、毛細管ピペットで沈渣をとり、すり合わせ法又は、引きガラス法で塗抹固定して下さい。

図

 早朝尿は細胞変化が強く、細菌も多いので早朝尿排出以後の尿を採取して下さい。

 十二指腸液・膵液・胆汁

消化酵素により細胞変化が生じるため、氷冷中の容器に採取し直ちに遠心し、すり合わせ法等で塗抹固定して下さい。

図

 腫瘍穿刺物、擦過物、スタンプ材料

これらの材料は極少量しか採取されない場合が多く、塗抹・固定までに乾燥しやすいので特に注意し迅速に処理して下さい。

1. 腫瘍穿刺物

穿刺針の中に吸引されたわずかな材料を塗抹するので、特に乾燥しやすくなっています。採取に必要な用具をもって臨床検査技師がベッドサイドに出向き、技師がスライドガラスを持ち、先生に吹き出してもらい直ちに塗抹固定して下さい。
必要に応じてギムザ染色用の標本も作製して下さい。

 1名で吹き出し、固定するとほとんどの場合乾燥してしまいます。

乾燥を防ぐためには!!
  1. 穿刺液を滅菌生理食塩水に浸すと針の内面に細胞がこびりつくこともなく乾燥を防ぐことが出来ます。ただし、スライドガラスより材料が剥脱しやすいという難点があります。
  2. 針の中の細胞を保存液の中に吹き出し遠沈して下さい。但し回収率が悪く、細胞の破壊がおこることもあります。
図

2. 擦過物

固定液を横におき、塗抹後手早く固定して下さい。

3. スタンプ材料(捺印法)

組織をピンセットでつまみ、スライドガラスにタッチして下さい。

  • 軟らかく細胞成分に富む組織 →軽く捺印して下さい。
  • 硬く細胞成分の少なそうな組織→力を入れてしっかりと捺印して下さい。

※タッチ中に組織を左右に強く振らないでください。
タッチ面がずれて核陰影や核線が多くなり検鏡しにくくなります。又、あまり多くタッチすると最初の塗抹材料が乾いてしまうので注意して下さい。

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